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zoom RSS 禁じられた中世魔術(後編−下)

<<   作成日時 : 2017/08/04 22:17  

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陽が傾き始めた夕刻前。

教会に非難していたオリバーが自宅に呼び戻され
エドとロレインに対面。

挨拶もそこそこに

「この鏡ですが・・・」

とエドが口にした途端、
オリバーは目に涙を浮かべながら
こう言った。

「俺にはどうすることも出来ない。
今こうして、その鏡を見てるだけでもう・・・
怖くて震えてくるんだ。
勝手な言い分だが、お願いです。
その鏡は、あなた達の手で処分してくれませんか」

クルスと聖母のメダイを身につけ
そう小さくなりながら言うオリバーを見て、
心から後悔し反省しているのがわかった二人は

「私達もその方が良いと思っていたのですよ。
わかりました。この鏡は私達が責任を持って
引き取りましょう」

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そう答え、早々に件の鏡を
車のトランクへ詰め込むと現場から発つ。
ニュージャージー州から
二人の家があるコネチカット州までは
数時間のドライブとなる。
夜になってからの出発は、なるべく避けたかった。

何故なら、
眠気という隙―― “気の緩み”との闘いがあったし
加え、なによりも
鏡の中へ一時的に封印された悪霊達は
完全に封印されてしまう前に
エドとロレインに対し、憎悪パワーの総てをぶつけ
挑んでくる
だろうから。

現場での死闘を終えたからといって
“ゴーストハンター”よりキツい
“デーモンハンター”という職業は
すぐリラックスできるような気楽なものではない。
それが体に叩き込まれているエドは
慎重にハンドルを操作し、自宅を目指す。

だがはたして予想通り

オリバーの家を出て僅か数キロ行かないうちに
最初の攻撃が起こった。

高速道路を走行中、
用心のために付け替えたばかりのラジアルタイヤが
いきなりバーストした
のだ。

突然のアクシデントに
車は安定を保てず、猛スピードでスピン。

幸いなことに、間一髪でどの車も避けてくれた
きわどい操作でどうにかスピンを停止させ
命を拾ったエドは、大きく息をつくと
ロレインと祈りの言葉を短く唱えて心を落ち着かせ、
休まず再び車を走らせる。

ぐずぐずしてはいられない。

予想を超える速さで仕掛けられた悪霊達の反撃に、
猶予を与えてはならない
のだ。
これは序の口だ。

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再びハイウェイを走行するエドたちの後ろを
10分もかからぬ内に、

今度は

大きなトレーラーが尾行するような形で
ピタリとつけて走っているのに気がついた。

その異様さをロレインが察知。
気をつけたほうがいいわ、とつぶやいた途端、
まるでその言葉を聴いていたかのように

大型トレーラーは強引に二人の車を追い越し、
行く手に立ちふさがった
のだ!

慌てたエドが、
クラクションを鳴らす。


鳴らし続ける彼の隣で、ロレインが叫ぶ。

「あなた、見て!」

のろのろ運転で立ちふさがるトレーラーは、
あろうことか、
緑色をした不気味なゼリー状の物質
後方目がけ・・・
エド達の車目がけて、大量にぶちまけた。


急停止も叶わず、もろ車にかかり
フロントガラスにへばりついた謎の物質は
粘着性が強く、視界を奪う。

ワイパーを動かしても なかなか拭えず
滲みながらも、やっと視界が利くようになった途端、

今度は左側から、
全く同じ大型トレーラーが現れた


そうして同じく緑色のゼリー状物質を
エドの車にだけ目がけて撒き散らした
のだ。

またもや付着した妙な物質のおかげで、
ハンドル操作がおぼつかない。

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「なんだ、このトレーラーは!?」
「何も書いてない真っ黒な車体なんて・・・、見てよエド!
ナンバープレートが・・・付いてないわ」

二人の緊張は、いやがおうにも高まる。

幻の車・幻の物質などではなく
ここまでハッキリと
現実に物質化した悪霊達の攻撃
ついぞお目にかかったことが無かった
からだ。

2台目のトレーラーが姿を消すと
また数秒で同じトレーラーが現れ、ゼリー状物質をまかれ
それが消えるとまた同じ型のトレーラーが
別方向から・・・

と、

実に合計6回も、

同じ大型トレーラー
ゼリー状物質を撒かれるという攻撃に遭い続けたのだ。

皆、同じ
真っ黒な車体の同型トレーラーで
ナンバープレートをどれも付けていなかった。


どう考えてみても、
人間の仕業ではない。

7回目にならないうちに
エドは安全策を取ることにした。

このままだと神経がもたずパニックを起こす。
ずいぶん遠回りになるが、ここはハイウェイを下りて
やり過ごすほうがいい、と判断したのだ。


高速で走れなくなったものの
信号待ち以外は淡々と流れるように車は走ってゆく。
二人の気持ちがだいぶ落ち着き、
1時間くらいたった頃。

すっかり日が暮れて夜となっていた、
暗い山道に入ったときであった。

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突然、猛スピードで迫ってくる
車のヘッドライトがバックミラーに写った。

一瞬、緊張はしたが一定の速度を保っていると
みるみる追いついたその車は
追い越し車線に入るなり、あっけなく
夫妻の車を追い抜いていってしまった

だが、ホッとしたのは
つかの間だった。

何故なら、その車は
車種こそは普通のセダンだったが
ボディが真っ黒だったからである。

不安が強まったロレインは、
とっさにナンバープレートを見た。

ナンバープレートは、さっきのトレーラーと違い
ちゃんと付いていた。
付いてはいたが・・・

何も書かれてない

ただの真っ白な板切れがくっ付いていただけだった。

「・・・あの車、ナンバープレートが・・・!」

ロレインがそう言うや否や
その黒塗りセダンは、急にUターン

まっすぐこちらへ向かってくるのが、
光る目玉のように迫ってくるヘッドライトで確認できた。

車間距離がぐんぐん迫ってくる。

あの迫ってくるセダンは
突っ込んでくる気


スピードがまったく落ちていない。

避けられるものなら、とっくに避けていた。
しかし、不可能だ。

今、エドとロレインの車は
二車線道路などではなく、
つり橋の上を走っている
からだ。

山の中のつり橋は、
一車線分の幅しか無い


フルスピードで迫る黒のセダンと正面衝突するか
避けて つり橋から谷底へダイブするか

どちらにしても
命が助かる選択肢でなく
正真正銘、絶体絶命の大ピンチ
だった。
猛スピードで不気味なセダンが正面から迫る。

堪えられず、エドが叫ぶ。

「よけられない!!」

絶望の声を彼が上げた、その時。


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『直進しなさい』


たった一言の、
優しいが
厳しさを含んだ
口調。


焦りと命を失う寸前の恐怖で一杯だったエドは

まるで涼風が通るように、
その不思議な声が自分の内に響いた瞬間
恐れを超える勇気が湧き起こった。

そうだ。
聖なる存在へ、
すべてを預けるのだ。

エドはブレーキから足を外し
逆にアクセルを踏み込んだ

黒の不気味なセダンと
スピードを上げるエドの車が、
お互いに全く譲らず
まさに正面から激突しようとしていた。

あわや衝突――、

その直前にエドは渾身の思いで、絶叫。

「聖ミカエルよ!我らを救いたまえ!!」

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エドがその言葉を終えた瞬間に
黒いセダンは、かき消えていたのである。

・・・そう。

あの不気味な黒塗りの車は、
幻だった
のだ。

魔の鏡は・・・封じ込められた悪霊達は、
夫妻が住む地元(コネチカット州)に入る前に
何としても二人を殺そうと

まず

高速道路では大型トレーラーで襲撃、
あきらかな現実となって物質化し、猛攻により
エドとロレインを散々疲弊させた後、


今度は
疲れきった二人が
またもや現実の車と錯覚するように

“黒い”セダンという
“不安をあおる車”の【幻覚】を見せたのである。


もし、二人がまんまと操られたまま
エドがハンドルを切るかブレーキを踏んでいたら
つり橋から落下し
二人の命は無かっただろう。

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そうして

その後は何事も無く、まもなく二人は
コネチカット州に入り、帰宅。

鏡の中の悪魔・悪霊達も
すべての魔力を出し切ってしまったのか
ウォーレン家に着き、自営博物館へおさまった後は
何の怪奇現象も起こしてはいない。


この魔鏡が収められている
夫妻が始めた【オカルト博物館】は、
米国コネチカット州に現存。

2006年に夫のエドは亡くなってしまったが
ロレインは現在も霊能者活動に専念。

神父の協力のもと
オカルトミュージアム内を定期的に祈り清め
運営も手がけている。

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Lorraine Warren speaking at the conference/2013

今後も世界は、
年老いて尚 闊達なロレインの活躍に
期待してゆくだろう。




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