エフェソスと黒聖母

トルコの地中海沿岸にある、古代都市エフェソス遺跡は
現在も世界有数の観光地としてつとに有名
である。

さて、

このエフェソス遺跡の南側に位置する、緩やかな山の中に
“ローマ法王庁公認の聖地”があるのを
ご存知だろうか。

イエス・キリストの御母君、
聖母マリアが余生を送ったという家が、それである。

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19世紀ドイツの、尼僧K.エメリッヒ(1774-1824 独)
不食の上、
原因不明の病で実に12年間、横になったまま過ごした人物であったが、
キリストの聖痕現象を身に受け、時には血を流し
空中浮揚や透視・読心といった特殊能力を示したという
神秘家でもあった。

その寝たきり状態の中、
彼女は

「なだらかなオリーブの茂る丘、ラバの通れる道の先・・・
エーゲ海とサモス島が見渡せる場所。
聖母様が死を迎えるまでの生涯をすごした家が、そこにあります」


幻視によって導かれた
訪れたことの無いエフェソスの様子を詳しく伝え、

それに基づく発掘調査を1891年に行ったところ
間違いなく
エフェソスから9kmほど離れたオリーブの丘に
1世紀の建物遺跡と暖炉と見られる跡・その灰が、そして
4世紀の壁の跡や7世紀に建てられた聖堂跡などが
次々と発見された
のである。

それまで
聖母マリアの生涯について大きく分かれた2つの論争があったのだが
このエメリッヒの幻視に基づく大発見が
「聖母マリアが没したのはエルサレム」という論を打ち消し
「エフェソスで聖母マリアは生涯を終えた」という決定を促した
のである。

その後1967年、
ローマ教皇パウロ6世がこの家を訪れ、聖母に祈りを捧げたことによって
ローマ法王庁公認の聖地へと格上げされた。

そしてもう一つ、

「エフェソスの聖母マリアの家」を語る上で特筆すべきは
ここで奉られている
『黒い聖母マリア像』であろう。

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エフェソスだけでなく
『黒聖母(または黒聖母子像)』は、世界に約400体、存在する。


この黒聖母像の殆どは
“色塗りして黒くした”のではなく、
初めから“黒い木材や黒い石材などを利用し、作られた”

像であるのが判明している。

20世紀にこのことが判ると、様々な研究家達が説を唱え
今でも論じられているようだが
ヨーロッパ中西部・特に古くケルト人たちが活躍した地域を中心に
黒聖母像が多く存在す
る事実から、
各地の古い『地母神信仰』との習合結果ではないか?
という説

やはり一番強いらしい。

例えば、
エフェソスはエーゲ海沿岸に発展した文化都市であった故、
古代の女神・アルテミスを信奉する聖地であったし

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(エフェソス遺跡アゴラから出土されたアルテミス像。
上半身は乳房、あるいは蜂の卵、男性の睾丸であるとされ
豊穣の女神・大地母神として崇められていた女神像である。
また、この像はクレタ島のアルテミス神などの原型といわれる。)


他に、代表的な地母神としては
ギリシャのアルテミス・ローマのキュベレィ・エジプトのイシス・・・

などが挙げられるが

事実、
フランスのサン・ジェルマン教会では
安置されていた黒い聖母がイシスであることが判明し、
1514年頃に撤去
され
シチリアのギリシア語地域であるエナ の教会に安置されていた聖母は、
大地の女神デメテルと、その娘ペルセフォネであった
という。

また、黒聖母像の分布が
古代巨石文明遺構の分布と多く重なることから、
黒聖母と、ドルイド教の関連性も指摘されている
そうだ。

さらには、黒聖母像を奉る地域において
聖母出現が多い
ことも、避けることは出来ないだろう。

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スイス アインジーデルンの黒聖母


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スペイン モントセラト モンセラ修道院大聖堂の黒聖母子像


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フランス ノートルダム・デュ・ピュイ大聖堂の黒聖母子像



『ファニート、どこへ行くの?
私の子供の中で一番小さくて愛らしい子、ファニート・・・』

スペインはグァダルーペで起こった、かの有名な聖母出現事件は
1531年12月9日、
何の変哲も無い素朴な市民、フアン・ディエゴが受けた
聖母からの、こんな呼びかけで始まった
のだが
(ファニートは、フアンの愛称。)

グアダルーペの聖母は
先住民文化において重要な地位を占める
リュウゼツラン(竜舌蘭)の女神との習合であるとの説
が古くからあった。

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(スペイン グァダルーペの黒聖母像)


1968年4月2日~1971年の長期間にわたり、
カイロのザイトゥーン (Zeitoun) にあるコプト正教会で出現した聖母

非常に多くの人がこれを目撃し
治癒などの奇跡があったことがよく知られている。

だが驚くことに、

このコプト正教会での聖母出現は
近年にも再度、起きており

それは、2009年12月9日
無原罪の聖マリアの祭日の、翌日より始まったという。



この動画は
一般見物客が携帯で撮影したものなので、画質がよくないが
簡単に説明すると、
黄色く(黄緑?)両脇で光っているのは教会屋上の十字架で
真ん中付近で、薄いブルーに光っているのが
出現した聖母マリア。

ここで特に不思議だと思うのは、
両脇で黄色く光っている十字架。これらは特に
照明が設置されていない、ただの石造りの十字架・・・との事。
なのに、何故かそれ自体が
電光の様に、光を発し輝いている・・・。


そして、エジプトといえば
古代神話の中での地母神、女神イシスが
多神教の中の代表的な、母なる女神として
長い数千年の時を経て信仰されてきた
地であった。

“混じりけの無い純粋始原の色”
“何ものにも染まらない色”
“万物の根源の色”
“全てを生み出す大地の黒土色”


「聖なる黒」=「母なる色」という解釈が
黒いマリア像を創り、古代の地母神と融合、
母なる存在への信仰を引き継ぐもの・・・という解釈へ辿りつけば



「白」=美しい・純粋・光・正しい・善
「黒」=汚い・カオス・闇・悪い・罪

などという

単純な決め付け、浅はかな考えは
唾棄すべき愚かさなのだと、気がつかなくてはならない
だろう。



今はすでに
そんな時代に来ているのだ。